放たれたる闇の翼――輝ける蒼き翼――
 

「いなくなった奴のことは、どうだっていいだろ…」

 出来るだけ、平静を装って言ってみる…
食べることに夢中になるふりして…言葉にした。

「そういうわけには…」

 そんなこと言われたって…気にしないようにするしかなくて…
胸の奥が痛くて、なんだか沈みそうになる…。

「ホント、ロシアの飯ってうまいな…」

 それ以上の会話をうち切るように、食べ物をさらに口に入れる。

部屋に戻っても一人でいられるわけでなく…
泣き言を言えるわけでもなく…少し、ぼんやりとして…
ベットに寝ころんで天井を見つめるだけ…。

「あぁ…」

 カイがいないことが、こんなに辛い…。

コンコン…

「誰ですかねぇ、マックスでしょうか?」

 扉が開く音がして…。

「だ、誰ですか貴方は!?」

「「どうした?」」

 あわてて、ドアに向かえば…一人の男が立っていた。

「カイ様が、お会いしたいそうです…」

「私達は、カイに会う必要はありません…」

「そんなこと言うなよ、カイが会いたいって言ってきてくれてるんだ…いこうぜ」

 カイが会いたいというなら、どんな理由でも嬉しい…俺は、カイに逢いたい。

「なんだかんだ言っても、タカオが一番心配してたんだな…それでこそ、タカオだ」

 そう言って、レイは笑ったけど…俺は、そんなこと聞いてなかった…
カイに会える…俺が思ってたのはそれだけだった…。



バイカル湖…

氷のあまりの透明度に、黒く見える…
それはまるで、俺の心のようだった…
心の奥底にある闇…カイがいなくなったことで…暴かれた…俺の闇。

澄んでいて綺麗なぶんだけ…俺は、その闇が怖かった…。

「カイー…」

 俺は、駆け寄った…そうしたかったから…逢えて、嬉しかったから…。

「ふん、一人足りないな…」

 その言葉で、俺の足は止まった…
カイは、帰ってくる気はないんだ…まだ、俺達の聖獣を奪う気で…
それしか、頭にないんだ…俺の事なんて…どうでも…。

「やっと、この時が来た…お前に負けたあの日から…俺は…」

「俺が、最強になるために貴様に勝つ!」

 そこまで、俺が必要ないのか?
お前は、俺のことをそこまで憎んでいたのか?

わかった…

「戦う、お前に負けない!」

 敵対するしかないのなら、戦う…そして、俺は勝ってみせる!
そして、お前が気付いてくれればいい…。

「私も戦います、小さなこの胸の痛みを教えて差し上げます!」

「俺も戦う、仲間に裏切られるこの思いを教えてやる!!」

 レイと教授の言葉なんて、きいていて聞いてないような物だった…
これは、カイと俺のとの戦いだったから…。

けど…けど…

勝てなかった…カイに…本当の強さを知らない…
カイに…勝てなかった…。

ビットが…光り輝いて…蒼龍を奪われそうになったとき…

「勝った…勝ったぞ…」

 そう言って、カイが浮かべた笑みは…
酷く歪んだ笑みだった…怖いくらいに。

「まだ僕がいるネ」

マックスがやってきて…

『タカオは、もう一つベイをもってるネ』

その言葉で、俺はやっと思い出した…
ドランザーが、いや、ドランザーなら勝てると…

「なんだ!?」

「カイ!お前が捨てたドランザーだ!!」

 赤い光で輝いて…ドランザーが、

「ドランザーが泣いている…」

 キラキラと、光を零して…ドランザーが泣いていた…。

「ブラックドランザー、何をしている!」

 ブラックドランザーには、足りない物がある…。

「ドランザーも、お前を倒したいと願っている!!」

 カイを、あのままにしておきたくない…
私欲的な望み…カイが、あんな風に歪んだ笑みで…笑うことさえなければ。

カイの側にいられれば…ただそれだけの、私欲のために…。

「カイー!!」

「手を延ばせ!!」

「何故、俺を助ける?」

 カイの顔には、何も浮かんでなかった…無表情と言うより…
感情が出てなくて…真っ白なような…。

「仲間を助けるのは当然だろ!」

 仲間何て言葉でくくれない存在だった…。

「仲間…」

「そうだ!!」

 俺は、カイが戻ってきてくれさえすればよかった。

「手を延ばせ!」

「…」

 伸ばされた腕、掴んだ手…
カイが、戻ってきたような気がした…カイは、変わってしまった…
でも、きっと帰ってくる…。

「カイ…」

 俺は、カイを見つめた。

「木ノ宮…俺は、まだしなければいけないことがある…」

 その言葉とともに、カイは背を向けた…。

「忘れ物だぜ!」

 そう言って、ドランザーを投げてやればすんなりうけとって…
カイは、小さく笑った…。



俺は、嬉しかった…
カイは、俺達に背を向けたけど…
振り返らない訳じゃないのだと…

きっと帰ってくる…

今はただそう信じて

待つだけしかできないけど

それでも 戻ってくるはずだから

俺は 側で笑えるように

元気になって

貴方を待ってる…

                                    エンド
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なんか、すっげー微妙な話…明るいんだけど…
シリーズに入れるには…いまいちな作品…
闇の翼シリーズで一番の駄作かもι
幸せネタが苦手なんだよなぁ…おいら;;
だれか、書いてくれないかなぁ…………(切実に;;)
リンクは、いつもどおりちょっとしたら外すんでι

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