闇を広げる

黒き翼を広げ

全てを 壊す

失うモノがない

闇の鳥に魅入られた

堕とし子

 …あっさりと、実にあっさりと付き離された。
投げ捨てられた、ドランザー…
まるで、俺を表しているようで涙が零れそうだった…それでも…

それでも…

あいつの前では泣きたくなかった…

『友情などくだらない…』

 全てが、崩れていくような…そんな気分だった。
もう用はないとばかりに、背を向けられて…屈み込んでドランザーを
掬うように、拾い上げて…胸にしまい込んだ。

『もう、いいんだ…』

 諦めるのかと、皆が言った…

諦めたくなど、けしてなかった…

『もう、いいんだ…』

 胸にいれていた、ドランザーを取り出して…
握りしめて…ゆっくりと手を開いた。

『もう…』

 もう、カイは戻ってこないんだ…。
カイは…もう、俺の元へ戻ってくることはないんだ。

涙が零れて…弾けた。

『カイは、戻ってこない…』

 言葉にして、ますます…胸が…胸が痛かった…。

 無理して笑う事なんて出来なくて、声を漏らさずに
ただ頬を涙が伝っていく…
幾筋も幾筋も、溢れだして…止まらなくて。

『一人に、してくれ…』

 皆が、心配してくれるのは…痛いほどわかってた…
でも、カイをなくした俺は笑うこともできなくて…

痛む心抱きしめて…

冷たい部屋で凍えて震える。

『カイ…』

 掠れた声で名前を呼んで、答えのない事に
沈む…。

本当に、戻ってこないのか?

なんで、あそこまで変わってしまった?

なんで…なんで…

そんな、疑問ばかりが頭をよぎって…
どうしようもなくなる…。

『帰って来いよ…』

 早く、早く帰ってこい…。

『まってるから…』

 待ち続けられるほど、俺の気は長くはないけど…
それでも、カイのことだけは…ずっと…ずっと…
待っているから…。

『カイ、好き…』

 好きだから、信じていたい…
待ってるから…帰ってきて…涙をこぼしても…
辛くても、切なくても…待ってる。

『本当は、置いていって欲しくなんかなかった…』

 置いていかないで、側にいて…って、伝えたかった…
カイの冷たい瞳に射すくめられて…
伝えたかったことも、言えなくて…だから…
伝えたいよ…。

『カイ…』

 なんで、こんなに自由じゃないんだろう…
好きだって気持ちも…素直に伝えられないんだろう…

 なんで、俺は…何もできない子供なんだろう…
だから、離れてしまわなければいけないのかな…。

『なんでなんだろ…』

 カイは、俺が一番じゃない…
カイは、俺のことを選んではくれない…
必要なくなれば、ドランザーと同じように捨ててきたんだろう。

『カイには、俺が必要ないのかな? 俺は…』

 カイが必要で、いなくなれば
苦しくて切ないのに…
止める事も…側にいる方法もない。

『カイの側にいたい…』

 抱きしめられたい、声が聞きたい…
好きだと言って欲しい…。

『一人は嫌だ…』

 孤独にしないで、俺を置いていかないで…
側にいて…抱きしめて。

『好きだから…』

 この思いが、カイに迷惑でも…
好きになることは止められなくて…愛して欲しくて。

それでも、無様に追いすがることは出来なくて…
心だけが締め付けられて…

思いが、狂っていく…

『愛してるから…』

 伝えそこねた思いは、心に残る。
答えはない…。

『ひとりにしないで…』

 あっさりと、必要がなかったもののように
切り捨てていかないで…
カイの代わりになる物などありはしないのだから…。





愛じゃなくてもいい…

戯れでも…

蔑みでもいい…

 口付けて…抱きしめて…。



何も、カイ以外に欲しくはないから…
その為なら、何でも差し出すから…。

羽を毟る

白き翼を

地に堕ちてなお

闇に焦がれる

哀れな子

闇に魅入られ

心囚われた

堕とし子

                                   エンド
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さあ、だんだん、シリーズ化してきましたι
ダークネタですιでも、実は今回半分以上見逃して足りしてι
悲しいっす;;

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