雪が降る…雪が、空から音も立てずに降ってくる…
それは、酷く綺麗で…綿毛のように見える…。

「雪か…タカオが好きそうだ…」

　そう、俺は思った…きっと、雪が積もれば雪合戦だと…一番乗りで外に出るに違いない…
そんな様子が、頭に浮かんできて…無意識に笑みがこぼれた。

「カイ…遅いなぁ…あ、雪だ…」

空を見上げれば、雪が降っていて…上着を抱えて外へ出た…
雪は、嫌いじゃない…どこまでも続く白は確かに綺麗で…夜の闇にさえ映える。

「…う、さみぃ〜」

雪は、嫌いじゃない…でも、好きなわけでもない…
遊ぶのは好き、つもればきっと雪合戦をする
でも、だけど…雨と違って音のしない雪は…独りが寂しい

柔らかくて…優しいはずなのに…

雪は…一人の寂しさを増させる。

「寒くなってきたな…」

　雪が降るほどだ、当然か…
タカオは、外でこの空を雪が空から生み出されるように降ってくる様を見ているのかもしれない…・

「風邪を引くまで、突っ立っていそうな奴だ…」

　早く、かえってやらないと…自己管理の出来ない奴だから…側にいてやらないと。

「はぁ〜」

吐き出す息は真っ白で、当たり前のことなのになんだか面白くて
繰り返し繰り返し白い息を吐き出す。

でも、だんだんくらくらしてきて…地面に寝ころぶ…。

「…やりすぎかな、酸欠かも」

自分の子供っぽさに、笑いがこみ上げてきて…一人で笑った…。

そうして、また空を見上げた。

「光みたいだよな…」

真っ黒な闇に、小さな白い光が沢山あって…浄化しようとしてるような
そんな感じ…白って、綺麗すぎるから…。

「思ったよりも、時間がかかるな…」

　ちょっと、遠出しただけなのに…思ったより時間を食ってしまった…
待っているだろう、タカオのこと思うと…ただただ、早く帰らないとと思った。

「やはり、他の日にするべきだったか…」

　少しばかり、呼ばれて…雑務をこなした…
出かけるときには、あいつは笑って手を振っていたけど…本心を明かさないから
嘘でも、笑って平気なふりを続けているような奴だから…
自分には厳しいのに、他人には酷く優しいあいつが…寂しくないように…
側にいてやれるように…それだけを…。

「うんしょっと…」

寝転がっていたら、そのまま寝てしまいそうな気がして…
とりあえず、体を起こして座り込んだ
そうして、また空を見上げたけど…肩に重心が掛かって怠くなってきた…
でも、空を見つめていたかった。

「やっと、見えるところまで帰ってこれたか…」

　結構時間がかかったが、きっとタカオが待っていると駆け足になりかけた寸前…
あげた足は、すとんと地面についた…。



タカオが…泣いていたから…

慈愛に満ちた瞳で空を見つめて…

言葉もなく…

嗚咽を漏らすこともなく…

ただ酷く綺麗な透明な涙を

零して…

一枚の絵のように

その景色の一部に縫い止められたように

静止して…月明かりが差し込んで…

時が止まったような瞬間だった…

無意識だった、視線を感じたような気なんてしなかった…
ただ、そっちに振り向いただけ…そうしたら、カイが居て…

言葉もなく…

綺麗な瞳が月光で煌めいて…

雪降る中立ちつくす…

雪の精のような人…

とても　綺麗で…優しい人…。

そうして、時が止まったように見つめ合って…
言葉を交わすように唇が動いて…でも、声を出さないで…
瞳と、唇だけで言葉を重ねて…
「おかえり…カイ」
そうして…
「ただいま、タカオ…」
二人して微笑んだ。

「タカオ…風引くぞ…」

　小さく呼びかけて…近づけば…。

「カイ…」

ぎゅって、抱きついて、しがみついた…。

「タカオ…」

　困惑したように、言葉を発せば…。

「雪の降る夜は、一人にしないで…」

小さく、それだけを訴えて…さらに強くしがみついた。

「あぁ…わかった」

　珍しく、弱気に…自分を頼ってくるタカオを抱きしめて…カイは深く、頷いた。

「約束…」

そうして、交わした約束…それだけで、心が温かくなって…
孤独の寂しさは癒されて…幸せになるのだ…。

交わされた約束は

ただ空だけが見ていた

白い雪は

空からの贈り物

SNOW　WHITE…



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　END

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白のイメージって…この時期、雪になってしまうんですよ…ι
ウエディングドレスも浮かんだんですけど…タカオちゃん用に（笑）
結婚式のイメージが沸かなかったので…
冬に白い雪…のイメージでかかさせていただきました…
今回は、一応テーマからはずれるほどではなかったと思うので…はい。