翼をなくした天使達

 白い翼なんていらない、俺は、星騎使になりたかったわけじゃない
全ての人が幸せになれればいいと思ってたけど…。

 独りじゃもう駄目なんだよ、アズールが居てくれなきゃ
ここが、痛いんだ…心が痛い。

ある日…

『必要なのは、天使だろ』

 平和になってしまえば、俺は必要ないだろ…ゼウスのじっちゃん。

そう言って、翼を引きちぎる…

飛び散る血、広がる真紅…。

「タ、タケルさん!!!」

「ちょ、ちょっと、タケルなにやってんのよ!!」

 あわてて止めに入る、カンジーとポーチ…
けれど、もはや、翼はもがれた後であったけど。

「ってぇ〜」

 痛みに、眉を顰めて…流れ出る血の香が噎せ返るように室内に満ちる。

「何と、馬鹿なことをしたんじゃ」

 天使が羽を、自らもぎ取ってしまうとは。

「ゼウスのじっちゃん…」

 ポーチ、カンジー、みんな、ごめんな…。
俺、アズールの側に、行きたいんだ…。

「タケルー!!」

 ポーチの叫び声…。

「ごめん、ポーチ」

 悲しませたくは、なかったけど…

 アズールが来てる…俺のことを、迎えに。

「本当に、これでよかったのか?」

 耳元に囁かれる、アズールの声…。

「…うん、いいんだ」

 誰かを悲しませても、選んだ道なのだから…後悔したりなんかしない…
ぎゅって、不安かき消すように…アズールに抱きついて。
声をださずに、涙をこぼす。

「タケル…」

 ぽんぽんと、規則正しく背中を叩いてやる…慰めるように
ただ、ただ、優しく抱きしめる…。

「アズール…」

 きっと、翼を毟った傷は癒えることもなく…血を流し続けるだろうけど…
癒えない傷の痛みも…忘れちゃいけない罪だから。

「俺の前では、声を出して…泣いてもいいんだぞ…」

 声を押し殺して、涙をこぼすタケルは…見ているこっちが、哀しくて。

「アズー…ル…うぅ…ひぃっく…俺…に…は……」

 お前が、必要だったから…
お前が居ない世界は色あせて…辛くて、心がボロボロ…。

「あぁ、わかってる…」

 俺には、お前だけだから…
他に、見つめるモノなどありはしなかった…側にいて、抱きしめてやりたかった。

「ひぃっく、うぅ…ひっく…ぅぃっく……」

 羽の痛みなんて、たいしたことなんかない…たとえ、消えることがなくても…
この心に空いてしまった、真っ黒な穴を…抱きしめて生きてはいけないから。

「好きなだけ、泣けばいい…」

 もう、離ればなれになることはないから…。

「ぅん…側…に…居て……っ」

 もう、離ればなれにはなりたくない…側にいたい….。

「あぁ…いてやる…」

 俺は、お前の為だけに…。

「俺…みんな…のこと…ポーチも…カンジー…も…ダーツも…ロココも…じっちゃんも…」

 出会ってきた、たくさんの天使や悪魔達のこと…みんな好きだった…。
殺したり出来なかった…殺したくなかった。

「大好き…だった…」

 大切だった…悲しませたくはなかったんだ…
でも…それでも…お前がいないことに耐えられなかった…未来なんていらない…
お前と過ごす今が大切だから。

「俺だけは、わかってるから…」

 お前の気持ち、お前の行動…他の誰が否定して、蔑んでも…
俺だけは、お前のことわかってやるから…。

「お前が、罪というのなら…その罪も、俺が一緒に背負うから…」

 一人で、孤独に耐えなくてもいい…。
自分の中に、全て抱え込まなくてもいい…辛いときは、泣き言を言って。

「ありがとう…アズール……」

 そこでやっと、タケルは微笑んで…アズールを見つめた。

「……」

 アズールは、小さく笑って…タケルの唇をさらっていった。

「ん…」

 その口付けは、癒すように柔らかく触れて離れた。

「愛してる…」

「うん…俺も…」

 交わす愛の言葉も、はっきりとした意味を持って…
確かに、伝わった…。

誰かが言っていたけど

誰かに悲しみを与えても

大切にしなければならないものはあると

何を信じなくても

たった一つ

大切なものだけは手放さないようにと

天使の翼

エンド

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暗いっす、でも…離ればなれって、苦しいじゃないですか…
相手の気持ちを信じることは…自分との戦いだし…
あいてが、裏切ったときに…信じてたぶんだけ、傷つく…
そこまで、わかってて…なお、傷つくことを恐れず
待っていられるかとか…そんな風に思うんですよ。

 

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