習慣
 一人で居ると、気付かぬうちに爪を噛んでしまう幼い頃から身についてしまった習慣で苛立ちに、無意識に
手が口元へよる。

カリッカリッ

 小さく音をさせながら、爪を噛む。

カチャ…

 小さく音をたてて扉が開かれた。

「誰だ…」

 無意識に、爪を噛む手を止めて口元から手を離す。

「カイ、何やってるんだ?」

 入ってきた主は、タカオだったらしい…それを認めると、他の奴でなくてよかったと思った。

「なにも…」

 仲間だ、友達だ、甘ったるい考えに…ま、いいかと時折思ってしまう自分にも苛立ちを憶えて
幼い頃からの習慣だった爪を噛む癖が酷くなった。

「ふ〜ん」

 素っ気ない態度は、いつもどおりで部屋に入ってきた瞬間の違和感は勘違いなのだと思った。

「何か、用か?」

 あまり、今は居られたくないと言う思いからか普段は関わることさえない自分から声をかけていた。

「んぁ、そうそう、レイとマックスとキョウジュがさ…ベイの改良で話し合っててさぁ」

 邪魔になるかなぁ〜って思って、カイは暇だろ?だからさ来たんだ…。
俺の邪魔になるとは思わなかったのか…などと、思いながらも。

「お前にしては、殊勝な心がけだな」

 と、何故か追い払う気は失せていた。

「なんだよそれ〜」

 カイが、かまってくれたのが嬉しいのかタカオは怒っているようなこえで笑っていた。

「そのままだ…」

 心なしか、柔らかいカイの声…冗談でタカオが叩くまねをしたら腕を掴まれた。

「いてっ…」

 タカオは、痛みに顔をしかめた…。
それに対して、カイは手の力を緩め心配げな瞳でのぞき込む。

「いや、掴まれたのが痛かったんじゃないんだ…カイの爪に引っかかれて」

 タカオは、そう言って苦笑いを零す。

「悪かったな…」

 掴んでいた腕を放して、謝罪を述べた。

「いいって、それよりさ…カイって、もしかして爪を噛む癖ある?」

 一瞬目を見開く、驚いたといってもいつも通りのポーカーフェイスに隠れてしまっていたけど。

「あ、やっぱり」

 答えるよりさきに、引っ込めていた手を引っ張られた。

「木ノ宮…」

 ちょっと、困惑したように名前を呼ぶ。

「うわ〜、ギザギザ…これ、引っかからない?」

 その手を見つめて唸っていたかと思うと…突然。

「ん〜、ちょっと待ってろよ」

 言うが早いか、どこからか爪切りを持ってきた。

「いい」

 断ったが。

「今、切っておかないと…カイは、どうせ切らないじゃん」

 また、引っかかれたくないし…。
そんなことを言って、一方的に爪を切りだした。

パチンッパチンッ

 静かな部屋に、爪を切る音が響く…。

「爪噛むの止めろよ、せっかく綺麗なつめしてるのに…」

 噛んだら、ギザギザになっちゃうだろ…。

「………昔からの、癖なんだ」

 小さく、小さく答える。

「今まで、誰も止めなかったのか?」

「あぁ……」

「こんなに、綺麗な桜色してるのにな…指とか、形も綺麗だし」

パチンッパチンッ

 カイの爪を切りながら、タカオは呟くように言う……。

「指なんぞ、人の身体パーツの一つにすぎないだろう?」

 タカオは、くすっと笑って。

「ベイじゃないんだからさ、パーツって言うのはやめたほうがいいって」

 それに、どうせ身体の一部なら綺麗な方がいいに決まってる。
タカオは、そう言って笑った。

「よし、できた」

 その言葉に、手を引っ込めようとすると。

「あ、ちょ、まだ駄目」

 そう言って、また手を引っ張った。

「ヤスリ、かけないと…」

 爪切りについている、小さなヤスリで親指からヤスリを念入りにかけ始める。

「もういい」

 いい加減、だるくなってきたカイは手を取り返そうとしたがどうしようもならず。

「駄目だって…」

 熱中し始めたタカオには、どんな言葉も通じないと諦めた。
静かに、爪を磨いていたかと思うとぽつっと声を漏らした。

「爪を噛むひとってさ…」

「ん?」

 中途半端で切れた、言葉のあとを促すように声を漏らす。

「アイジョウに、飢えてるんだってさ」

 しってた?

「…」

 図星を付かれたような気がした、タカオはそんなに鋭い訳じゃないだろうから誰かの入れ知恵だろうが。

「んー、よしっと」

 答えがないことを、気にせずタカオは右手の爪にヤスリをかけていたようだ。

「ほら、そっちもかして」

 そういって、左手をひく言われるがままに手を差し出す。

「カイの手って、ホント、綺麗だよなぁ〜」

 タカオは呟く。

「普通だと思うが…」

「うん、普通の手なんだけどさバランスがいいって言うか…」

 いつのまにか、ヤスリをかけ終わったようで爪切りは床に転がって床にそのまま座っているタカオは
椅子に座っているカイの手がちょうど目の前で撫でるように指をはわせていた。

「もう、いいだろう…?」

 いらだった声を、だそうとして…何故だか、問いかけるような声になってしまった。

「んー、もうちょっと」

 すっかり終わってしまったようなのに、カイの手を弄んでいた頬ずりしたり爪をなぞってみたりしていた。

「今度からさ、俺に爪切らせてよ」

 噛んだら、せっかく綺麗なのにもったいないし…。

「俺が、切るから…噛まないでさぁ」

「あぁ…」

 なんとなく、それもいいかと思った…誰かに爪を切ってもらうのも悪くはないだろうと。

「約束だぞ…絶対だからな」

「カイの爪は、これからずっと俺が切るんだ」

 タカオは、満面の笑みで笑った。

「わかった」

 カイも、少し頬をゆるめて笑っていた。

「うんうん」

 返事に、満足したようにタカオは頷く。

 あとは、たわいもない話をして…その間、タカオはずっとカイの手を触っていたのだけど。

「タカオー」

 キョウジュらしき声が、廊下から聞こえ。

「あ、終わったみたいだ」

 すっと、立ち上がると扉を開けた。

「キョウジュ、ここ、ここ」

「タカオ、カイの所にいたんですか?」

「あぁ」

「改良の方の、話は一段落付いたので皆で昼食をとりに行こうという話になったので」

「飯だ飯だ〜」

 タカオは、嬉しげに笑う。

「レイと、マックスは先にいってるので私もさき行きますね」

「分かった、カイとすぐ行くから」

 キョウジュを、見送って。

「いこうぜ、カイ」

 それには、答えず腰を上げた。
突然、タカオは部屋の中を振りかえってカイを見つめて。

「そうだ、アイジョウって俺にはよくわかんないけどさ」

 俺が、居るだろ?カイのこと、好きだし…。
側にいる、これからずっと…約束したし。

「あぁ…」

ちょっと、微笑んで。

タカオ、カイ、と2人そろって部屋を出て廊下を歩き出した。









END




後日談

「あれ?カイ、爪…綺麗にしてるネ」

 マックスを口火矢に、レイとキョウジュも口々にそのことを口にした。

「誰かに、切ってもらったのか?」

「珍しく、綺麗にしてありますねぇ」

 どうやら、すでに爪の噛み癖はみんな気付いていたらしく。

 カイは、沈黙を守ってそれでも微妙に眉を寄せていたらしい。
タカオは、笑っていた…とか、なんとか…。

おわり


 

 


タカオ、手フェチか?(笑)
あはは…そう言う訳じゃなかったんですけど
カイが、タカオに爪を切ってもらうのが
書きたかっただけです。

自分が、爪を噛む癖が習慣なので
一回、それをネタにとか思いまして(笑

 

 

 

 

 

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