金の海

コンコン…

 ありえない、ベランダの窓を叩くその音に驚きそろそろと窓辺によればそこには漆黒の闇に光る瞳
黒い髪は、夜の闇に同化してけれど闇の中で強く輝く琥珀色の瞳は怖いくらい綺麗で目を奪われた
目が慣れてくるとその人物の、唇が言葉をかたどっているのに気がついた。

「……ォ…タ……カ…ォ……」

 名前を呼んでいるのに気がついて、窓を開けて招き入れた。

「レイ〜〜」

 名前を呼ぶと、にっこりと笑顔が向けられた……。

「どうかしたか?」

「あのさ、いくらなんでもホテルの窓から来るのはやめろよ一瞬……ゴニョゴニョ…」

 最後の言葉は濁らせてしまった、最初お化けかと思ったなんて言えないよな…。

「ん?」

「……あ、あぶないだろ落ちたら」

「そうか?あれくらい、どってことないぞ」

 そうだった、レイには…一般常識が通じないことがあるんだった……と、思い当たり
小さくため息を吐いた。

「…ま、いいか…で、何のようだったんだレイ?」

 レイはいかにも、ああそういえばと言う感じの表情をした。

「そうだ、海へ誘いに来たんだ…」

 海って、今日マックス達と腐るほど泳いだ海のことだよな…今更、しかも、こんな真夜中じゃ
泳ぐ訳じゃないだろうし……一体なんだ???

「満月」

「???」

 どうやら、よく分からなかったのが表情にでていたらしくレイは言葉を続けた。

「今日、満月だから夜の海がよく見えてとっても綺麗だ」

 だから、誘いに来た…と、言いたいらしい。

「あぁ、そっか、今日は満月だったんだ…最近、夜空なんて見てないから気づかなかった」

「タカオ、行かないのか?」

 レイは、小首を傾げ俺に聞いた。

「ん、あぁ、そうだなぁ〜」

 はっきりと言えば、断る気はなかった…それに、もっと見ていたかったから。

「よし、俺も行く」

 俺が答えたとたん、レイはニコッと笑うとまた窓からでていこうとした。

「え、あ、おい、ちょ…レイ」

 何だ?とでも言うように、くるりとレイは振り向いた。

「ま、窓から出るのはやめようぜ…」

 俺は、わずかに頬を引きつりながら笑った。

「そうか?タカオが、そういうなら仕方ないな」

 内心、仕方ないじゃない常識だろなどと思いながら窓からでない事に納得したようなので
それで、良しとすることとした。

「じゃぁさ、早くいこうぜ」

 決めたら即というか、タカオは廊下へ出ようと扉を開けた…レイも、それに続いて部屋を出た。

       *                  *                *

海へ−−−−−−−−−−−−−−−−

「うわぁ、すっげぇ〜」

 満月に照らされる海は、海浮かぶ満月じゃなくて海を染め上げる満月まるで金色の海
ちょっとした感動を味わった。

「だろ」

 レイは、嬉しげに満足そうに笑った。

「うん、スッゲェーキレー」

 その言葉しか知らないように、俺は何度も繰り返した。

「あぁ、綺麗だな」

 レイのその目は、満月を見てたのではないのだけれど。

「ホント、綺麗だよな〜」

 その視線に、タカオは気づかなかったのだけれども。

「月は…誰にも、手が届かないから綺麗なのかもな」

 タカオは、キョトンとしてそれから笑っていった。

「手は、とどくさ…ほら」

 海から、ピチャと海の水をすくい上げてレイに見せた。

「月が……」

 そこには、空に浮かぶ月が映し込まれていた。

「考え方を、変えたらさ実は簡単な事っていっぱいあるんだぜ」

 ニヤッと、悪戯っ子っぽい笑みを浮かべると手に持っていた海水をレイにかけた。

「わ!!」

 手の中の月に、見入っていたレイはその海水を避けることは出来ず思いっきりかかった。

「ははは……」

 タカオは、楽しげに笑って靴を脱ぐと海に膝ぐらいまで入ってバシャバシャと海水の掛け合い。

「タカオ〜〜、やったな〜〜」

 レイも、勢いよく海水を掛けかえしてきて…もう、二人してビショビショになるまで

『ふふ……ははは〜……』

 ケラケラと、笑いあう。

「濡れちまったな〜」

 ひとしきり笑いあった後、タカオはぽつりと言った。

「風ひいたりしてな」

 もう、空は白みはじめ月は沈もうとしていて黒い闇は太陽でピンク・オレンジ色の光が雲を染めて
空に上りゆく朝日がとても映えた。

「クッシュン」

 タカオが、ちいさなくしゃみをした。

「風邪を、ひかないうちに部屋へ帰るか」

「あぁ」

 思ったよりあっさりと、タカオは頷いたので部屋に帰ることにした。

「レイは、知ってるか?」

 突然何をと、聞くまでもなく言葉が続いた。

「月には、海があるんだってさ」

 本当に、水が存在するわけではないけど…。

「きっと、昨日の夜の海みたいに」

 一面、金色の海なんだろうな。

「月は、クレーターの関係で海みたいにみえる部分をそう呼ぶだけらしいがな」

 苦笑しながら、間違いを訂正すると。

「レイは、夢が足りないな〜」

 金の海って、なんかいいじゃん。
ちょっと、ふてくされたように頬を膨らましながらタカオは言った。

「金の海か、きっと綺麗だろうな」

 ちょっと、想像してみてそう思う。

「だよな〜、きっとキラキラ光っててスッゲェー綺麗に決まってるさ」

 目を輝かせて言うタカオは、朝日に照らされて凄く綺麗だった。
きっと、月にある海よりもタカオの方がずっとずっと綺麗だと思う。

「あぁ、そうだな」

 レイは、小さく頷く。
二人で、昇る太陽を見つめながら・・・。

 やがてその場の空気に、酔うように二人はいつの間にか見つめあい…どちらともなく、唇をそっと寄せた。

        *                  *                *


 その後、ボーっと太陽を眺めていてすっかり体の冷えた二人はそろって仲良く風邪をひいて寝込んで
カイとキョウジュは、ふか〜いため息。
 マックスは、遊び相手のタカオの周りをうろちょろして翌日マックスも風邪をひいてしまい……
カイとキョウジュは、三人の看病で大変だったらしい。





                                                       
 END
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 夏に、水といえば海水浴だ〜という感じで…。
はは、なんか、レイタカって言うよりレイとタカオが出てきてるだけって感じっすね〜。
 キョウジュはともかく、カイが看病する姿はちょっと想像できないかも・・・。

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