See? Love is simple

 

―――ねぇ、知ってるかい?

愛とは、とても単純なものなんだよ…

 

 

 まるで当然のように漏らされた言葉、優しく頬に添えられる手、撫でるように上下へなぞって
カヲルはシンジに微笑みかける。

「ねぇ、シンジ君」

 君は、愛して欲しくて、父親に呼ばれたこの場所へ来たの?

 母親と死に別れて、父親は君を見返ることもせず、実の子供に注ぐべき愛は…
他のモノに、注がれてしまっているのに。

 君は、まだあの父親になにを期待してるの?

「…カヲル君……」

 どうして、どうしてそんなに酷いこというの?

 酷いよ、僕は…僕は…。

「愛は、何よりも単純だよ…」

 それは、君の母親しか父親は見ていないんだよ、君はただ利用される為だけに
側へ呼び戻され、それだけの価値しかない存在として代わりなどきくと
無価値な存在に貶められて…まだ、あの男に愛を求めてる。

 愛など、簡単なものでしかない、人は皆、思いこみに縋り付くように繰り返してるだけ。

「でも、君が愛して欲しいのなら…僕が愛してあげる」

「カ、カヲル君」

 優しく抱きしめられて、狼狽えたようにどもって、オリーブのような肌の頬を朱く染める。

「君が望むなら、僕が叶えてあげるよ」

 白い肌、シルクのような銀色の髪…有名ではないが、素晴らしい腕をした職人が
たった一つだけ心血を込めて作り上げたような、天使ごときビスクドールのよう。

 無機物なのに、生きているような美しい肌の質感、綺麗な人。

「なんで、僕なんかにそこまでしてくれるの?」

 不思議そうに、本当に不思議そうに…自分の真価など、気付かぬように無垢な少年は
その黒い瞳を見開いて、見上げてくる。

「君のことが好きだからだよ…」

 誰もが見惚れるような、優しい笑みを浮かべて…。

「言っただろう、君は好意に値すると」

 他の人間が、どれほど愚かで無価値なことか…自らの思いこみを、相手に押しつけて
奪い取り、残された幸せさえ壊していく。

 傷つくことを知った人間の方が、その脆い美しい心が何より綺麗だというのに。

「…こうい?」

 問いかけるように、首を傾けてキョトンとすれば…綺麗な顔が近づいて、焦点が合わなくなって
なにか柔らかいモノが唇に触れた。 

「好きだと、言う意味だよ…」

 悪びれた様子もなく、微笑んだままで…。

「カ、カ、カ…カ、カヲルくんっ」

 もう、トマト状態で顔は真っ赤に染まって…言葉も、うまく出てこない。

「ホント、君は…可愛いね…」

 歌うような声で、耳元に囁く。

「本当に、君は好意にあたいする…」

「愛してるよ」

 優しく甘い声音で、愛の言葉が紡がれる。

 シンジの為だけに、カヲルは微笑みを浮かべて親鳥が雛を暖めるように優しく抱きしめて
まるで、閉じこまったままの、シンジの心を溶かすかのように…。

「ありがとう…でも、僕は」

 カヲル君に、愛される資格など無いんだよ…
今ここにいられる理由さえ、利用できるからだ、利用できなくなれば僕の存在価値はなくなる
ここにもいられなくなる、それが怖くて…怯えて…だから、利用されることで居場所を確保しようと
必死に足掻いてる、どうしようもない人間なんだ。

「理由なんか、必要ないんだよ…僕には、君がシンジ君であると言うことだけで充分なんだ」

 僕は、君を裏切り事になる…きっと、それは深く君を傷つけるだろう…
そして、君は選ばなくてはならなくなる僕の死か君の死か、その手を血に染めて。

 僕は…

『タブリス…拾七番目の使徒』

「カヲル君…」

 大丈夫とでも言うように、シンジの右手を持つと手の甲に口付けを落とした。

「僕が、君のことを好きなんだから…心配いらないよ」

 君が、僕以外見なければいい…あの父親に愛を求めることなんかやめてしまって…
僕が君を愛してあげる、全てをかけて、君にあげる。

「ぼ、僕も…好きだよ…」

 ねぇ、本当に僕を好きでいてくれるの?

 置いていったりしないで、側にいてくれる?

「ねぇ、ほら、愛とは単純なものだと思わないかい…」

 好きという言葉も、好意という名の愛なのだから…
傷つけないで、護りたいという思いと、傷つけて自分のモノにしてしまいたいとそう思うのも
…好意という思いを、愛という言葉に隠しているだけ。

「僕は、君が好きといってくれるだけで…とても、嬉しいよ、シンジ君」

「…僕…も…」

 好きと言うことが愛なのなら、僕もカヲル君を愛しているのかな?

 触れていたいし、側にいて欲しい、きっと…それだけで、今までの哀しみをずっと忘れていられる
そんな気がする…。

「難しく思わなくていいんだ…好きという気持ちだけで充分なんだよ」

 人の気持ちなんて、大概シンプルに出来ているものだ、多くの人はその気持ちに理由を付けたがるけど
…理由を付けない人間の方が、こんなにも綺麗な心をしているのに…なんで、誰も気付かないだろうね
まあ、そのおかげで僕はシンジ君に好かれているんだろうけど…誰も気付かないから、シンジ君の
望むことを言ってあげれば、あっさりと心を開いてくれる。

 彼には引き替えなど要らない、ただ、自分を必要として愛してくれる人間が欲しかっただけ…言葉だけでも
だから、彼はむしろ献身的な人間で…耐えることや、尽くすことを喜びとする。

「ん…」

 シンジは、力を抜いて半身をカヲルに預けるようにもたれかかる。

「そう、それでいいんだよ…」

『君は、なにも考えなくていいんだ…』

『僕がいてあげるから』

 天使のごとくの微笑みをして、シンジを柔らかく抱きしめる…大気を震わせるよなヴォイス…
その声は、独特の響きをもって広がっていく。

 

 

そう、愛とは簡単なものなんだよ

君は、知っていたかい?

 

 

君が望むなら、その全てを叶えてあげるよ

君は好意に値する人間だから…

 

…シンジ君

『Love is simple.』

ねぇ、ほら愛とはとても単純なものだよ。

 

END



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うわぁ〜、何という今更なもん書いてるんだろうかι
かなり、昔だし…1997年くらいでしたっけ?あのころは、まだ僕も無垢だったなぁ
今が、2002年だから…5年ほど前ですかね?
確か、僕がこっちの道へ曲がった最初は4年弱くらい前で…
その時本を買った本屋は、今は潰れて他の本屋がやってます。
近所じゃないので、最近は全然行ってないんでさっぱりですけど。

で、この作品はホント今更のエヴァです…
カヲシンです…あの頃は、ホントにカヲル君大好きでしたね。
彼も、やっぱり美人系ですから(きっぱりι)

でも、やっぱ自分がロボット系に逝かなかったのは今でも不思議ですよ(笑ι

 

 

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