Dande Laion



 人の中では生きていけないと、みんなに親にさえ嫌われて生きてきた人が恐怖に怯える顔を俺はどれだけ見てきた?
深い谷に、細い吊り橋だけ誰も通ることのない場所、親に捨てられ年を取った爺様ももう何年も前に死んでしまった…
それからずっと独りぼっちで…誰もこの橋を渡ることはない、細くて少年しか渡れないような吊り橋でしかない
でも、その吊り橋は長すぎてとうてい少年じゃ怖くて渡れもしない。

「お〜い」

 誰かの呼ぶ声がする、橋の向こうに誰かが立っている獣が出ると誰も近寄らぬこの山奥の細い吊り橋の向こうに
夕暮れの光の加減で見えないけど、確かに俺を呼んでた…太陽に照らされて。

「聞こえてないのか〜?」

 ますます大きくなる声に、大きな不安を抱えながら…それでも、一人の暮らしの寂しさは自分の運命を憎んでもどうしようもなくて
ただ、向こうに立っている少年の声が嬉しかった。

「聞こえてるよ…」

 それは、さほど大きな声でなかったにもかかわらず答えが返ってきたことに向こう側の少年は気付いて突然、吊り橋を渡りだした
揺れる吊り橋をものともせず、身軽に器用に吊り橋を渡る。

 危ないのに、止めるべきなのに…その為の声が出ない、一人の寂しさが少年と一緒にいてみたいと心の中に訴えてくる
自分じゃあ選べない、だって一人の涙はあんなに冷たい。

「よっ」

 ぴょんと、最後の一歩を飛び跳ねて少年はタカオの目の前に立った…その姿は、太陽に照らされて金色のはずの瞳はとっても
不思議な色をしてた。

「うん…」

 人と話すのは、何年ぶりだろう…もうずっと、一人だった気がするもう慣れようとしてた慣れたと思ってたでもこんなに
誰かと居たかったなんて思わなかった。

「お前は、俺のこと怖くないのか?」

 母にさえ疎まれた俺に、お前は逃げないでいてくれる…珍しい蒼い髪に、深海を映したような瞳…化け物の子だと、疎まれて
こんな山奥へ、捨てられて嫌われ続けた俺から逃げないでいてくれる。

 まるで、何が怖いのかとでも言うようにしごく当然に頷いた。

「どうして、泣いてるんだ…」

 驚くような、少年の声でやっと気がついたなんで涙が流れてるかはわからなかったけど頬を伝う涙は暖かかった
婆様の死んだときの涙とは違って、とても暖かかった。

「え…わからない」

 真面目に答えたつもりなのに、少年は不思議な事を聞いた気分だとでも言うように不思議だと言うような色で瞳が揺れていた。

「泣くな…」

 それで少年は、タカオの頬に手をのばして涙を拭ってやったそして子供をあやすようにぽんぽんとリズムを刻むように
背中を叩く。

「うん、大丈夫…」

 なんで、始めたあった少年相手に泣けちゃったんだろう…なんで、少年は俺にやさしくしてくれるんだろう?
そんな想いを抱えながら、それでもなんとか涙は止めてちゃんとしっかり返事をした。

「…」

 特別、おしゃべりな方じゃないようだったあの顔で笑顔を振りまきまくられてもなんとなく困るような気もしたし
何も言わない方が、彼の言葉を信じられたから。

「えっと、名前なんて言うんだ?俺は、タカオって言うんだけど…」

 とりあえず、名前を聞くことにした…名前なんてどうでもいいけど、なんだか知っておきたいから。

「タカオと言うのか、俺はレイだ金李」

 漆黒の髪に、金色の月を映した瞳ただ静かな影のような気配だった…でも、とても綺麗で言葉は激しく足らなかったが
言葉よりも、行動で優しさを表すようなタイプに思えた。

「コンレイ…レイっていうんだ」

 俺は、久方ぶりに笑った一人きりでいても笑える事なんてなかったただ誰も憎まないようにとそんなことを言い聞かされていた
気持ちが不安定になると、変化を始めてしまうから。

「ここに、独りで住んでるのか?」

 村の噂が頭をよぎった『人を襲う化け物が居る』『人を食べてしまうんだ』と、俺はそんな事しないのに
噂だけが一人歩きして怖れられて独りぼっち。

「え、あ、うん…前は、じーちゃんと暮らしてたんだけどさ……」

 言葉を濁すように、言葉に詰まって…爺様が、死んでしまった日のことが頭に過ぎる…
まるで、寝ているようだったいつも通り座禅を組んで瞳を閉じていつまでも食事をしないから寝ているのかと思って
揺らしたからだは、バランスを崩したように倒れた。

『じーちゃん、じーちゃん…じーちゃん!!』

 名前を呼んで、呼んで呼んで…返事が返らないことに、爺様が目を開けないことに思い当たるまで呼び続けて
気付いたとたん、涙が溢れてきて止まらなくなってわんわん泣いた涙が枯れはてるまで泣いて泣いて声もかれて
泣き疲れて、爺様の身体を抱くようにそのまま眠った『なに泣いておるんじゃ』と、でも言って、目を覚ましそうで。

「辛いことが、あったんだな…話せるときでいいから」

 柔らかい声で、柔らかい笑顔を浮かべて労るように頭を撫でた…子供にするように、優しく頭を撫でた。

「…うんっ」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 そんな、小さな幸せのある毎日は続いていた…レイは、何も気かずにただ一緒に野山を駆け回って
うっかりと、タカオが転けそうになったのを支えて鋭い枝で酷い怪我をした。

「くっ…」

「だ、大丈夫か、レイ!?」

 大慌てで、駆け寄って流れ出る血に慌てて薬草を噛んで柔らかくして張り付けると服を裂いて器用に手当をした。

「これじゃあ、あしたは遊べないな…無理すんなよ」

 そう言って、笑って。

「もう、今日は帰れよ…傷が治ったら、遊ぼうぜ」

 ちょっと、泣きそうな気分になりながら、背を向けて吊り橋へ走った。

「お、おい、タカオ!!」

 慌てて追っかけようとしたけれど、約束を思い出した。

『絶対、この橋は渡っちゃダメだぜ』

 そう言って、苦笑気味に哀しそうに笑ったタカオの顔を見たから。

「…タカオ……っ」

 じっと、吊り橋の向こうを見つめていたが、やがて落胆したように肩を落として谷に背を向けて…歩き始めた…
途中で、谷の方を振り返ったがちらりと見ただけでまた歩き出した。

 そのころ、橋の向こうの木の裏で高をが唇を噛みしめて涙を流した。

「ぅう、レイ…っく…」

 会えないのも哀しい、でも、もうあわない方がいいって思う…一人じゃいられなくなっちゃうから…
当たり前に側にいすぎて、いてくれないと哀しくて寂しくて耐えられなくなりそうだから。

「さよなら、レイ…」

 その呟きだけが、曇り空に溶けてった。

 合わなくなって数日後に、叩きつけるような激しい雨の日さよならのかわりに見つけた金色の琥珀を
握りしめて…今日で最後の土産、橋の向こうに立ついつも無口なレイの瞳によく似た色の小石。

 嵐のような激しい風に、小さな吊り橋は激しくうねり老朽化していた綱が切れて谷底へ向かって堕ちた
衝撃に、意識が遠くなる。

「うぅっ」

 身体の痛みに目を覚ました、谷底から見上げた空は遠く狭くなって…自然と涙が溢れてきた。

「レ…イ…!」

 いつも通り、元気な声を上げて…橋の向こうにいるはずの……に、聞こえるように元気な声で
元気だと、この通り全然平気だと…。

 雨に濡れた、この頬の冷たさなど、生涯レイには知って欲しくはない…。

「忘れていいから…」

 泣かないで良いように、俺の事なんて忘れていいから…。

 やまない雨が、激しく打ち付けて身体から体温を奪っていく…血は、固まることなく流れていく
この体中の血が流れ出て、生まれ変われるのならレイの様にキレイなれればいいな
誰からも愛されるような、綺麗な姿に…。

レイ…っ
 もう全然、元気な声は出ないけど、俺は不思議と寂しくないんだこの濡れた頬の冷たさなどもう感じない
おそらくお前の優しさが、この涙の冷たさを奪ったんだ。

 手の中の、小さな小石を握りしめて…金色の琥珀を見つめれば、不思議と涙顔こぼれ落ちる…
何故だか、流れる涙の訳を知らないが…この、心の温かさはそのまま答えで良さそうだ。

 瞳を閉じればほら浮かぶ、金色に写した姿が。

「…レ…イ……」

 嵐が過ぎ去り、谷底には矢車草の花畑…風でたなびく様が、流れる水のようでまるでタカオの瞳の色に
よく似た花…。

「タカオ…」

 傷も治って、嵐もやんで家をすぐさま飛び出して谷で見たものは… 風にたなびく、矢車草。

季節は巡り

毎年 矢車草は花を咲かせる

やがて 人々は

その花を愛でるようになり

誰からも 愛された

FIN

********************************************************
結構、そのまま歌詞使いすぎですねιでも、影響ですから…。
バンプ オブ チキン好きなんですよ、なのでそのうち…ハルジオンを書くかもしれません。
いや、反響が良ければ…っても、反響無いですけど……(がーんι)
同じ題材を勝手に使用させてもらいましたがιやっぱ、俺の文章なんかはヘタレです;;


実際の歌詞では、たんぽぽの花ですね…タカオちゃんの、イメージだと向日葵ですけど。

つーわけで、実際の歌詞の方も機会が有れば聞いてみてください。

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送